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「キャリア継続支援型」福利厚生に取り組む先進企業
2015年・2016年健康経営銘柄選定

コニカミノルタ株式会社

「キャリア継続支援型」に
切り替えることによって、
業績アップや企業価値の向上につなげて行く。
当社が取り込む健康経営の方向と
非常に近いのかな、と思っています。

早くから健康経営に
取り組まれた背景について、
お聞かせください。

鈴田さん 最も大きかったのは、2008~2011年当時、メンタル不調による休務者が増えていたことです。
1000人以上の大企業製造業では、メンタル休務者の比率が0.5%程度というデータもありましたが、当時の弊社はそれより高かったですね。
経営トップとは、「大事な社員がこれだけ休んでいる状況は経営課題」との認識を共有していました。 加えて、従業員の平均年齢が高まるにつれ、生活習慣病やその予備群も増加し、心身両面の不調に伴う「生産性の低下」をいかに防ぐかが、会社にとって大きな課題になっていました。
一方、健保組合においては、高齢者納付金・支援金の増加と、従業員の高齢化に伴う医療費の増加とがダブルパンチとなって財政が悪化し、2011年4月に、苦渋の決断でしたが大幅な保険料率引き上げを実施するに至りました。

経営、人事、健保とで、
強い危機感を共有
されていたのですね。

そうです。そこで健康施策の抜本的な変革に取り組むこととなるのですが、会社と健保それぞれが抱える課題に対し、当時は別々に取り組んでいたんですね。その一番大きな理由は、「組織風土の違い」だったと思います。

外部インストラクターによる「運動講習会」
コニカミノルタ社内で開催されている、外部インストラクターによる「運動講習会」

会社では「現場密着」「現場重視」の姿勢が強く、各部門を担当する人事が、組織長・部門長との連携を重視しながら課題を解決していく、というスタンスです。一方で健保は「外部との連携」を強く意識していて、優れた他健保に学ぶ、とか、他健保の成功事例を積極的に取り入れていこう、といった風土が強くありました。当時は年に数回、健保の常務理事や事務長と、会社の健康管理組織の長とがミーティングをやっていましたが、議論が全く噛み合いませんでした。
ただ、会社と健保と双方の課題は、よく見れば表裏一体の関係です。会社も健保もリソースは限られているのだから、従業員の健康度の向上という共通の目標に向かって、会社と健保の一体運営を始めることとなりました。

一体で推進しよう
という機運が、
自然に湧き上がってきた
のでしょうか。

当時の人事部長が健保の理事長も兼任していて、「一体運営でやるべし!」とのトップダウンによって始まりました。
当社は伝統的に人事部長が健保の理事長を兼ねていますが、総務部長や人事担当役員が理事長をやられている企業は他社でも結構あると思います。
ただ、私のような、いわゆる会社の健康組織の長が健保の常務理事を兼務するという形態は、2012年からスタートしましたが、かなり珍しいのではないかと思います。

「従業員の健康」が、
トップマネジメントも
踏み込むべき
重要課題であることを、
どのように発信
されたのでしょうか。

私たちには、やはりトップから何らかの理念を発信しなければ、従業員の行動も一朝一夕には変わらない、との考えがありましたね。そこで、社長名でのグループ健康宣言を全社に発信していこう、ということになり、人事が中心になりながら、健保と産業医も加えた三者で何回も検討を重ねて原案を作り、社長に提案していきました。
原案作成に当たっては、どのような表現にすれば社員の心に響くものになるかを意識しました。
こうして2011年4月に制定された「コニカミノルタグループ健康宣言」は、「会社の基本姿勢」と「従業員に求める意思行動」とをそれぞれ明文化しています。

【理念】コニカミノルタグループ健康宣言

貴社の健康宣言には、
「従業員の健康が
すべての基盤」
とあります。

私どもの業界は、変化が非常に激しくコンペティターとの競争も激しい。その中で持続的成長を図っていくためにいろんな戦略を立てていますが、弊社の社長は常々、「どんなに優れた戦略を作っても、実行するのはヒトだよ。」と申しています。最も重視すべきは人財力であり、そのベースとは何かと問われたら間違いなく「健康」です。どんなに優秀なヒトでも、健康を害したらパフォーマンスを発揮できませんから。だから会社として、健康第一の風土醸成が必要だという考えを基本に据えています。
そして、人財力の最大化による業績の向上と同時に、従業員の視点に立つならば、従業員満足度を上げていかなければなりません。個人が生き生きと働ける会社づくりですね。その大きな軸として当社が採用しているのが「健康経営」であり、もう一つが「働き方改革」です。

健康経営で人財を活用していくという理念を、
どういった体制で推進
されておられるのでしょうか。

それが会社と健保の一体運営(コラボヘルス)です。健診の運営機能と、健診から出てくるデータを分析し、抽出された課題に紐づいた対策を立案・実行するまで、会社と健保が一緒になってやっています。
会社側に所属する産業保健スタッフは本来、会社側の産業保健領域の業務に従事するのが基本ですが、健保との一体運営領域に含まれるデータ分析や、対策の立案などについても、常勤の産業医や看護職のリーダーには一緒に考えてもらっています。
そして、当グループでは事業所も200人規模から2,700人程度の規模までありますが、200人規模でも1人は保健師・看護士を配置して、フェイス・トゥ・フェイスで社員をケアしています。

「一体運営」ですから、
会社と健保とで
緊密な情報共有体制を
設けておられることと
思います。

もちろんです。「健康組織の週報会」というものを毎週火曜に開催していますが、そこには人事部健康管理グループのすべての管理職、健保からは事務長、事務次長、そして常勤産業医の先生が出席します。先週の活動を相互に共有したり、人事部長からの情報を共有したりする場です。
もう少し突っ込んだ議論は、月に1回開催する「健康施策PT」で行います。例えば、中期計画をどうブラッシュアップするのか、ストレスチェックの結果を検証した上でもう一段上を目指すにはどうすべきか、などと毎月いくつかテーマを設け、産業医には専門的な観点で、人事・健保もそれぞれの観点から意見を出し合っています。

ストレスチェックで言えば、
法対応云々に留まることなく、
そもそも不調者を
生まない組織作りや、
活力の低下した方々を
元気にする手立てまで
一体で考えてみませんか、
と私どももご提案しています。

そうですね。体系的なメンタルヘルス対策を導入して一定の効果が出てきていることは大きく2つあって、1つはリハビリ勤務制度の導入によって、再休務者の抑制につながっています。
もう1つは、ストレスチェック後の組織分析の結果を組織長にフィードバックしていますが、一番ストレス度の高い「レベル4」に該当する職場に対しては、人事が組織長と一緒になって、改善策を打つのです。

組織長に対して、
「あなたの責任です」とか、
「あなたが考えてください」
ではなく・・・

「人事が一緒になって考えますよ」と。組織の状態というのはいろんな数値に出てきますから、それを掘り下げていくと何が原因なのかは分かってくるんですよね。その原因にどう対処していけばいいのかを、組織長には主体的に考えてもらうのは当然ですが、現場で多忙な組織長に丸投げするのではなく、人事がサポートするという姿勢がとても大事です。
この話をすると、「ではレベル4の職場の組織長は人事考課でマイナスが付くのですか?」といった話を聞かれることがありますが、そんなことは一切やりませんし、意味がありません。
そこの組織風土をよくすることによって、パフォーマンスが向上してこその人事考課ですから。

それでは「健康KM2016」は、
会社全体の方針・計画の中で
どのように位置付けられているのでしょうか。

当社は2014から2016年の3ヵ年のグループ経営計画「Transform 2016」を、現社長の山名の強い意志のもと遂行していますが、例えば環境や品質といったテーマ同様、健康管理も会社全体の方針・計画の中で、その中期計画の一部を構成する位置付けとなっています。

健康中期計画の内容として、
どのような施策や目標を
具体的に掲げられたの
でしょうか。

健康中計の骨子は大きく2つあり、1つは「リスク者のミニマイズ化」です。リスク者とは、フィジカル面ですと、血圧・血糖・脂質等で健康リスク度を4分類し、就業制限がかかるくらいの高リスク者から特定保健指導対象者まで。一方メンタル面では、休務者と高ストレス者の2分類。
リスク者については、産業保健スタッフの徹底した個別指導によって、3年かけて人数を目標値まで減らしていくというのが、1つの柱ですね。
2つ目の柱が「健康ムーブメント」と呼んでいるもので、従業員の健康度を示す指標を8つ設定して、PDCAを回し、事業部門や関係会社別の状態を指標ごとに見える化しています。

つまり、リスク者の極小化
という手当をしつつ、
同時に、今はリスク者ではない
ひとたちがリスク者へと
シフトすることを予防する、
という両面からの
施策展開ですね。

その通りです。
次に目標値ですが、リスク者のミニマイズ化であれば、ベンチマークは2012年から2013年までの改善率です。このベンチマークのさらに1.5倍の改善率を3年間達成できた数値を目標値としています。結構野心的な、高い目標なんですけれどね。
一方、健康ムーブメントの方は、国内の主要企業で上位10%に入る水準で設定しています。だから、ここまで改善をすれば、国内主要企業の中でも上位の10%の「いい生活習慣を持った会社」になれるので、それを目標に3年間やっていこうという訳です。

この健康中期計画が
公表されて初めて、
健康経営という考えに
触れたという方々が
社内の大多数だったことと
思います。
反応はいかがでしたか?

従業員への投げかけにおいて、あまり「健康経営」ということは声高には打ち出していません。ピンとこない従業員も多いので。健康になれば皆さんのパフォーマンスも上がるし、個人のプライベートも充実しますから取り組みましょう、といった呼びかけ方をしています。
経営の改善はもちろんなのですが、社員一人一人に大きなメリットがある訳ですから。

推進して
見えてきた課題は
ございますか?

やはり、健康への関心や意欲の低い人たちをいかに巻き込むか、という点でしょうね。
当社では社員に歩数計を持たせて「歩け歩け運動」を推進していますが、国内1万2千人の従業員のうち、だいたい5千名弱ぐらいが参加するところまできました。
この方々の歩数データをみると、この5千名弱の人、割合でいくと34%の従業員は、毎日1万歩近く歩いています。一方で、「1日1時間以上毎日コンスタントに歩いてますか」という設問に「はい」と答える従業員は、33.8%しかいません。
つまり、歩数計を持って十分に歩く34%と、歩数計を持ち歩かず毎日1時間も歩かない66%とに、明確に分かれてしまっているという事実が非常によくわかってきました。
また、運動講習会ですとか、管理栄養士による食事指導のセミナーなどを開催しても、参加者はみんな、健康に関心があり、比較的いい生活習慣を実践している人ばかりなんですよね。
そこで昨年、試みとして「できるビジネスパーソンの、できる生活習慣」と銘打った社内講演をやってみました。全体に参加を呼びかけるのではなく、定期健診の問診結果から、生活習慣改善の必要がありながら行動に移せていない人たちを抽出して、看護師や保健師から個別でメールしたり、リーフレットを直接手渡して、「今度こういう講演があるからぜひ来てください」と。すると300人ぐらい集まってくれました。そんな取り組みを始めています。

「健康になりましょう!」
と言っても響かない人でも、
「出来るビジネスパーソンになりたいな」との思いへと
訴求する方向を
ちょっと変えることで、
心が動かされたのですね。

これは産業医のアイデアなんです。ただ「健康になろう」というだけでは、会社で推進している意味も半減します。その先に「健康になればもっと仕事ができる、私生活も充実する。」という「メリット」を訴えていきたいと考えています。

中期計画も
いよいよ最終年度ですね。

着実に成果が出てきています。定量的には、代表的な指標でいうと最もフィジカルリスクの高い「就労制限対象者」と軽リスクの「特定保健指導対象者」、ここはかなり減少しています。これは産業保健スタッフのしっかりとした個別指導の賜物だと思っています。
それから「メンタル不調による再休務者」の数ですが、リハビリ勤務制度の導入により復職時のフォローを手厚くしたことなどが功を奏し、2011年度と比べると1/4の水準にまで減少しました。
定性的な面では、見える化によって部門長クラスの意識レベルが相当変わってきました。
また、健康経営銘柄に2年連続して選ばれたことによる社員の意識向上も、一定のレベルはあると思います。
ただ、健康意識の低い人たちをどうやって巻き込んでいくか、彼らの自律的な生活習慣改善にどうつなげていくか、ここが引き続きの課題だと思っています。

健康経営の推進により、
社員の皆様にも、
そして貴社にも
活力が生まれていることが、
よく理解できました。
私たちの目指す
「新しい福利厚生」も、
貴社の推進される健康経営と、
軌を同じくするものだと
考えています。

私もまったく同感です。リソルさんがやろうとしている「キャリア継続支援型福利厚生」、この目指す方向と、世に言う「健康経営」の目指す方向は非常に近い。
どちらも目指していることは、従業員に生き生きと仕事をしてもらって、高いパフォーマンスにつなげてもらえば、結果、会社の業績アップや企業価値の向上につながる、というものです。
もちろん、個人の幸福の追求が一方の目的にあるのですが、もう一方で会社にとってのメリット、リターンという側面もあります。従来の余暇充実型の福利厚生から、キャリア継続支援型福利厚生に切り替えることによって、どちらの目的も意識した両輪での取り組みになるという点で、大きな意味があることであり、注目しています。

(2016年7月26日、コニカミノルタ本社にて)

取材後記
危機を直視し、真正面から解決に挑んだ歴史。
鈴田さんのお話を伺いながら、コニカミノルタ社の健康経営をそのように思いました。
今、困難や課題に直面している会社こそ、変革と飛躍を遂げるチャンスが訪れているのかも知れません。

「健康になればもっと仕事ができる、私生活も充実するんだ、というメリットを訴えていきたい。」

勇気を持って戦ったヒトだからこそ伝わる、熱き思いがここにありました。
貴重なお話をありがとうございました。
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